内分泌療法(ホルモン療法) 

内分泌療法(ホルモン療法)とは

がんの中には、がん細胞の発育をホルモンが促進しているもの(ホルモン依存性がん)があります。
そこで特定のホルモンを分泌している臓器を手術で取り除いたり、ホルモンの働きを抑える作用のある薬を投与し、がん細胞の発育を阻止する治療が行われます。
この治療を内分泌療法 (ホルモン療法)といいます。
ホルモン依存性のがんには、乳がん、子宮内膜がん、前立腺がん、甲状腺がんなどがあります。

女性ホルモンについて

乳がんに関係するホルモンが、女性ホルモンです。
統計的にみて、男性の乳がんはおよそ女性の1/100の発生率です。また若くして卵巣摘出を受けた女性の乳がんの発生率も1/100といわれています。
このことから乳がんの発生には卵巣から分泌される女性ホルモンが乳がんに関わっていると考えられます。

近年の乳がんの増加は、乳腺の細胞が女性ホルモンにさらされる期間が長くなったことにも関係しているといわれています。現代は初潮年齢が低いにも関わらず少子化で、結婚年齢は上がり、閉経年齢も高くなっています。
妊娠期は月経がないことを考えると、現代女性はそれだけ女性ホルモンにさらされている期間が長くなっているということなのです。

女性ホルモンと乳腺の発達、がんの発生の関係

女性ホルモンは10歳前後に卵巣からの分泌が始まり、エストロゲン(卵胞ホルモン)は乳腺の乳管上皮の増殖を促します。
思春期後にはプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、乳汁を産生する腺房を形成します。成人女性はこの女性ホルモンの分泌に伴う月経周期に従い、周期的に変化を繰り返します。
乳管上皮はエストロゲンを取り込み、細胞を増殖させますが、エストロゲンを取り込む受容体(レセプター)が存在します。乳がんの大部分はこの乳管上皮細胞から発生します。この部分の遺伝子に狂いが生じ、がん化が始まるのです。
エストロゲンはこのがん化を促進する働きも持っています。

エストロゲンについて

エストロゲンの主な産生源は卵巣および副腎と末梢(主に脂肪組織)になります。脳の視床下部から放出される黄体形成放出ホルモン(LH-RH)が下垂体前葉を刺激し、性腺刺激ホルモンである黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌させます。そしてこれらのホルモンが卵巣を刺激してエストロゲンを分泌させます。

一方、視床下部から放出される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRF)、下垂体前葉からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促進し、副腎皮質からのアンドロゲン(男性ホルモン)が産生されます。末梢脂肪組織では副腎由来のアンドロゲンからアロマターゼという酵素の働きによって、エストロゲンが産生されます。

ここで注目したいのは、閉経前では卵巣、閉経後では副腎と末梢脂肪組織が重要になることです。従って乳がんに対する内分泌療法(ホルモン療法)とは、これらの仕組みを踏まえたうえでエストロゲンの働きを抑えることなのです。
閉経状況によるエストロゲン生成過程の違い

内分泌療法(ホルモン療法)の薬について

ホルモン療法(内分泌療法)で使用する薬には、エストロゲンとそのレセプターの結合を阻害するものと、エストロゲンの産生を抑えるものがあります。

抗エストロゲン剤 乳がん細胞中にあるエストロゲンがエストロゲン受容体と結合するのを競合的に阻害し、エストロゲン依存性の遺伝子が作り出す自己増殖因子などの産生を阻害する。
LH-RH
アゴニスト製剤
視床下部からのLH-RHと同様の作用を持つ製剤を持続的に下垂体にあるLH-RH受容体に作用させることにより、LH、FSHの分泌を低下させ、卵巣からのエストロゲン分泌を低下させる。閉経後の女性に使用され、卵巣摘出と同様の効果が期待される。体内で分解する基剤に薬効成分を分散させ、作用が持続する製剤であり、4週間に1回皮下投与する。
アロマターゼ
阻害法
アロマターゼとは末梢の脂肪組織等に存在する酵素。副腎皮質から産生されるアンドロゲン(男性ホルモン)がアロマターゼによってエストロゲンに変換される。アロマターゼ阻害剤はこのアンドロゲンからのエストロゲン合成を阻害。閉経後の女性のエストロゲンの大部分はこのアロマターゼを介するものであり、これを阻害して乳がんの増殖を抑える
合成プロゲステロン製剤 合成された黄体ホルモン(プロゲステロン)剤を大量に投与することで乳がんの増殖を抑える。この薬剤には多様な作用があるが、ホルモン受容体を介してエストロゲンの作用を阻害する作用、下垂体から副腎系、下垂体から卵巣系に働いてFSH、LHやACTHの分泌を抑え、エストロゲンを低下させる作用、乳がん細胞に直接働き、抗腫瘍効果を示す作用などがある。

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