甲状腺の病気

甲状腺の病気には、甲状腺の「働き」の変化と「形」の変化という2つの特徴があります。病気によってその両方の変化が現れたり、あるいはどちらか一方だけが現れたりします。

甲状腺の働きの異常

甲状腺ホルモンが多すぎる状態甲状腺ホルモンが多すぎる状態(刺激/TSHレセプター抗体)

  • 甲状腺でホルモンが無秩序に作られる状態
    バセドウ病、機能性腺腫 など
  • 甲状腺に炎症がおき、蓄えられていたホルモンが漏れ出てくる状態
    亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎 など

続きを読む

バセドウ病

病態

何らかの原因で体の中に甲状腺刺激ホルモン(TSH)と同じように甲状腺を刺激してホルモンを作らせる自己抗体ができ、無秩序に甲状腺ホルモンが作られる状態です。妊娠可能な若い女性に多い病気です。

症状

動悸、眼球突出、甲状腺腫の症状が有名ですが、その他に息切れ、多汗、暑がり、脂ぎった肌、手の震え、イライラ、疲れやすい、食欲亢進、体重減少、月経減少、下痢などがあります。
続きを読む

バセドウ病眼症

バセドウ病というと眼が出てくる病気だということはよく知られています。軽度のものも含めるとバセドウ病の患者さんの40%前後に何らかの眼の症状がみられます。なぜ眼が出てくるかというと、甲状腺を刺激する自己抗体が眼の後にある眼を動かすための筋肉や脂肪組織に炎症を起こした結果、筋肉や脂肪の腫れ・ むくみが生じ、眼球が前に押されて出てくるという説などが考えられています。

症状

眼の充血、眼痛、ものが二重に見える、まぶたが腫れてくる、視力が落ちるなどがあり、重症になると失明の危険もあります。両眼に起きることが多いですが、片方の眼だけに起きることもあります。またバセドウ病と眼症は必ずしも同時に起きるとは限りませんし、バセドウ病が良くなり寛解状態になっても眼の 症状が良くなるとは限りません。タバコが眼症の発症や悪化に影響しているといわれていますので眼症の患者さんは禁煙したほうがよいです。
続きを読む

機能性腺腫 プランマー病

甲状腺にできた腺腫が甲状腺ホルモンを勝手に作っている病態です。この病気を初めて報告した人の名前をとってプランマー病とも呼ばれています。甲状腺ホルモン値が高くなると動悸、息切れ、手の震えなどの甲状腺機能亢進症状がみられます。甲状腺シンチグラムで腫瘍への強い集積を認めることが診断の決め手になります。

治療

手術またはアイソトープ治療をお勧めします。

無痛性甲状腺炎

甲状腺に何らかの原因で痛みを伴わない炎症が起きた病態です。蓄えられていた甲状腺ホルモンが溢れてきますのでFT3, FT4が高値になり、動悸、息切れ、手の震えなどの甲状腺機能亢進症状がみられます。 TSHも抑制されていますので、バセドウ病と似た検査所見になりますが鑑別方法はTSHレセプター抗体や甲状腺刺激抗体が陰性であること、甲状腺ヨード摂取率が低値であることです。
この病気の患者さんには背景にほぼ100%橋本病があるといわれています。出産後にも多くみられますが、出産と関係なくみられることもあります。もちろん男性にもみられます。時間が経てばホルモン値は自然に正常化しますので機能亢進症状が強くなければ治療は不要です。再発することがあり、とくに出産後に高頻度にみられます。

亜急性甲状腺炎

甲状腺にウイルス感染が原因と考えられる炎症が起きた病態で、発熱と甲状腺の腫れ・痛みがみられます。名前は似ていますが慢性甲状腺炎(橋本病)とは全く別の病気です。炎症の広がりとともに甲状腺の腫れ・痛みも移動します。

検査

CRPや赤沈などの炎症反応が陽性で、蓄えられていた甲状腺ホルモンが溢れてきますのでFT3, FT4が高値になり、TSHは抑制されます。

治療

炎症を抑える薬を飲みます。無痛性甲状腺炎とちがって再発することは稀です。

橋本病(慢性甲状腺炎)

病態

何らかの原因で体の中に甲状腺を攻撃する自己抗体ができ、甲状腺に慢性の炎症が起きている状態です。九州大学の橋本策先生が1912年に世界で最初に報告 されたのでこの名前があります。日本人の名前が付いた数少ない病気のうちの一つです。中年女性の10-20人に1人にこの病気があるといわれています。

症状

慢性の炎症があっても甲状腺が腫れるくらいで、ほとんどの場合で甲状腺機能は正常に保たれており、無症状です。炎症が進んで甲状腺機能が低下し、ホルモン が作られなくなると、気力がない、顔や手のむくみ、皮膚乾燥、寒がり、体重増加などの甲状腺機能低下症状が出てきます。むくみが声帯や脳におきると声のか すれ、物忘れなどの原因にもなります。また血液中のコレステロール値が高くなりますので動脈硬化がおこりやすくなります。
続きを読む

甲状腺機能低下症

血液中の甲状腺ホルモン値が低下している状態で、原因として橋本病、甲状腺手術後、バセドウ病のアイソトープ治療後などがあります。

症状

気力がなくなる、顔や手のむくみ(粘液水腫)、脈が遅い、皮膚がかさかさになる、寒がりになる、眠気、食欲不振、体重増加、月経過多、便秘などがあります。むくみが声 帯や脳におきると声のかすれ、物忘れなどの原因にもなります。また血液中のコレステロール値が高くなりますので動脈硬化がおこりやすくなります。血液検査 では甲状腺ホルモン(FT3,FT4)が低値、TSHが高値となります。

治療

甲状腺ホルモンの補充療法を行います。毎日決められた量の薬(チラージンS)を飲みます。薬といってももともと体の中にあるもの(なくてはならないもの)ですから副作用はまずありません。薬の量が多すぎると機能亢進症状がみられたり、骨粗鬆症が悪化することがありますので定期的な血液検査が必要で す。またチラージンSは鉄剤や一部の胃薬と同時に服用すると吸収が悪くなりますのでこれらのお薬を服用中の場合は時間をずらして服用するようにします。

甲状腺の腫瘍(濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫ほか)

甲状腺の腫瘤は良性のもの(濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫など)と悪性のもの(甲状腺癌、悪性リンパ腫など)があります。これらが合併していることもあります。

濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)

濾胞腺腫は甲状腺にできる良性の腫瘍です。超音波断層装置や穿刺吸引細胞診などで診断し、悪性の心配がなければ定期的に大きさをチェックします。甲状腺ホ ルモン剤の内服で腫瘍が小さくなることもありますが、腫瘍が大きくて悪性の疑いがあるときは手術をお勧めします。腫瘍が甲状腺ホルモンを勝手に作っている とき(プランマー病)は手術またはアイソトープ治療をお勧めします。
続きを読む

甲状腺の病気と妊娠

甲状腺の病気は妊娠可能な女性に多く、病気のこと、治療内容、妊娠、授乳についてよく相談を受けますが、甲状腺の病気があっても治療で甲状腺ホルモン値が正常に保たれていれば問題はありません。

バセドウ病では放射線(アイソトープ)治療は妊娠・授乳中にはできませんが、内服薬や手術で治療できます。病気が妊娠前にわかっていれば治療で甲状腺ホル モン値が正常になってから(内服治療の場合は抗甲状腺剤が維持量になってから)妊娠した方が安全です。 機能亢進状態では流産・早産の危険が正常の場合より高くなります。抗甲状腺剤は妊娠中や授乳中であっても使用できますが、専門医にご相談ください。手術や 放射線治療後の患者さんで甲状腺を刺激する自己抗体値が高い場合、お母さんに症状はなくてもお腹の赤ちゃんに甲状腺機能亢進を起こすことがありますので注意が必要です。このような場合でも内服薬で治療できます。
続きを読む