-外科医の仕事と育児の両立を目指して
消化器外科専門医を目指して救命救急のある病院で働いていましたが、2人目の子どもを出産後、ハードな消化器外科医の仕事と子育てを両立し続けるのは難しいと思ったんです。そこで上司に相談したところ、乳腺外科は救急対応がほとんどなく、子どものいる女性医師でも比較的働きやすい環境だと勧められ、転科を決意しました。
当時働いていた病院の乳がん症例数が多くなかったので、もう少し充実したところで研修できないかと相談したところ、「ここがいいでしょう」と部長からご紹介いただいたのが相良病院でした。
乳腺外科専門医を目指すうえで相良病院で働く最大のメリットは、乳がん診療のすべてに携われることです。年間約700例と国内有数の手術症例数がありながら、検診、診断から、治療方針の決定、術後の補助療法、再発治療まで、一貫して診療できる環境は貴重だと思います。
たとえば、私は医師になってから病理組織について勉強する機会がなかったので、事前に希望を出して、病理診断科部長の大井先生に乳癌や乳腺腫瘍の病理標本の見方を教えていただきました。入職後に数ヶ月間かけて病理検査室に通いながら、乳腺病理の基本や手術・針生検検体の診断方法について学び、自らが検体採取する際に気をつけるポイントなども知ることができました。
手術はここ1年で約100件執刀しています。前職の消化器外科では乳腺の手術経験はなかったものの、当院に来てから乳房全摘術や部分切除術、センチネルリンパ節生検の他、腋窩リンパ節郭清も積極的に経験したいと申し出て習得することができました。乳房再建術の症例もたくさん経験させていただきました。
また、週3回朝8時から行われるカンファレンスも当院の強みです。悩ましい症例があっても多職種の多様な意見や最新の知見に基づき判断ができるので、一人ひとりの患者さんに合った最善の治療方針を提案することできます。
国内でもまだ実施している施設が少なく、データもなかったので、研究テーマにふさわしいのではないかという上司からのアドバイスもあって、421例を対象に患者アンケート調査とデータ統計解析を実施しました。結果、Suture Scaffold法は患者満足度が高く、手術時間は変わらず出血量は従来法と比べて少ないという報告を論文にまとめました。
「乳房温存術におけるSuture Scaffold 法を用いた Oncoplastic Surgery」という演題で発表を行った「第18回 日本乳癌学会九州地方会」ではベストプレゼンテーション賞と海外学会参加賞を受賞し、米国サンアントニオ乳がんシンポジウムでポスター発表を行う機会もいただきました。発表したポスターは、2021 JBCS Young Investigator Grant for SABCSを受賞しました。また、論文はAnnals of Surgical Oncologyにアクセプトされ、掲載されました。
「乳がん診療を網羅してできるようになりたい」、「たくさんの症例を経験したい」、「臨床研究がしたい」という方に当院は特におすすめです。患者さんが多いので診療中は忙しいですが、定時で退勤できたり、保育園が併設されていたりと子どものいる女性医師にも配慮された環境ですので、仕事も家庭も充実させたいという方はメリハリのある理想的な働き方ができると思います。
また、一人ひとりの希望を叶える風通しのいい風土も特徴です。私は自ら申し出て、前職で経験のなかった甲状腺外科の診療にも携わっていますし、新年度から鹿児島大学大学院の博士課程で基礎研究にも取り組む予定です。
症例数が多いからこそ、臨床研究の成果も出ますし、短期間でスキルアップすることも可能です。乳がんを極めたいと思う方こそ、ぜひ当院で一緒に働きましょう。